真宗葬送儀礼の成立から展開 ー「天文日記」の「御剃刀」記事ー

 証如が大坂本願寺における日次を記した「天文日記」を丁寧に読み進めるると、数少ないが大坂寺内住民の仏事に関する記述が見受けられ興味深い。ここでは、すでに大坂御堂での寺内住民だけでなく地方からの武士門徒・商工業者と推定しうる門徒の年回仏事が確認できる。いうまでもなく、「年回」の始まりは「臨終」であるから、その連鎖が大坂御堂で執り行われる仏事に反映して当然である。ここでは、死の床についた、と自覚した大坂寺内門徒の事例を紹介したい。ただし、希少な例であり、慎重な検討を要すると考えている。